学生のセミナーでEuclid環上での単因子論をやっていて,そういえばPID上でどうやるんだっけと思って本を探してみたら証明が見つからず.というわけで証明をメモる.他の先生が授業でやっていた証明(多分普通の証明)を基底をとらないようにしたもの.
$R$をPID,$M,N$をそれぞれ階数$m,n$の自由$R$加群,$f\colon N\to M$を$R$準同型とすると,適当な同型$M\simeq R^m$,$N\simeq R^n$の元で$f$は \[ \begin{pmatrix} d_1 & & & & \\ & \ddots & & & \\ & & d_r & & \\ & & & 0 & \\ & & & & \ddots \end{pmatrix} \] という形になり,$d_1|d_2|\cdots|d_r$.
以下$R$をPIDとする.まずは簡単な補題を準備.
有限生成自由$R$加群の部分加群は自由.
$M$を階数$m$の自由$R$加群,$M_1\subset M$を部分加群とし,$M_1$が自由であることを$m$に関する帰納法で示す.$m = 1$の時はPIDの定義そのもの.$m > 1$とし,$M = M'\oplus M''$と階数の小さい自由加群の直和に分解し,$p\colon M\to M''$を自然な射影,とすると, \[ 0\to M'\cap M_1\to M_1\to p(M_1)\to 0 \] は完全で,$M'\cap M_1\subset M'$,$p(M_1)\subset M''$は帰納法の仮定から自由.特に$p(M_1)$は射影的なので上の完全系列は分裂し,$M_1\simeq (M'\cap M_1)\oplus p(M_1)$も自由.
も一つ補題.
$M$を自由$R$加群,$M_1\subset M$を部分加群,$d\in R$とすると,$M_1\subset dM\Leftrightarrow$ 任意の$\psi\colon M\to R$に対して$\psi(M_1)\subset dR$.
$M_1\subset dM$ならば任意の$\psi\colon M\to R$に対して$\psi(M_1)\subset \psi(dM) = d\psi(M) \subset dR$である.逆に任意の$\psi\colon M\to R$に対して$\psi(M_1)\subset dR$であるとし,$M_1\subset dR$を示す.$M = R^m$として良い.$p_i\colon M\to R$を$i$番目の射影とすると,任意の$x\in M_1$に対して$p_i(x)\in dR$.つまり$x$の全ての成分は$dR$に属しているので,$x\in dM$.
定理を示す.$f,M,N$を定理の通りとし,$m$に関する機能で$d_1,\ldots,d_r$が存在することを示す.$\mathcal{C} = \{\psi(f(n))R\mid \psi\colon M\to R,n\in N\}$とすると,これは$R$のイデアルの族であり空ではない.$R$はPID,特にNoetherなので$\mathcal{C}$は極大元を持つ.それを$d_1R$とし,$d_1 = \psi_0(f(n_0))$となる$\psi_0\colon M\to R$と$n_0\in N$をとる.
$\{\psi(f(n_0))\mid \psi\colon M\to R\} = d_1R$.
左辺は$R$の部分加群であるから,$R$がPIDであることによりある$d\in R$に対して$dR$とかける.$d_1 = \psi_0(f(n_0))$は左辺に属するので$d_1\in dR$,つまり$d_1R\subset dR$.一方$d = \psi(f(n_0))$とある$\psi\colon M\to R$に対してかけるので,$dR\in \mathcal{C}$.よって$d_1R$の極大性から$d_1R = dR$となる.
同様の議論で次を得る.
$\psi_0(f(N)) = d_1R$.
補題4から任意の$\psi\colon M\to R$に対して$\psi(Rf(n_0))\subset d_1M$である.補題3を$M_1 = Rf(n_0)$に適用しすると,$Rf(n_0)\subset d_1M$,つまり$f(n_0)\in d_1M$がわかる.$m_0\in M$を$f(n_0) = d_1m_0$ととると,$d_1 = \psi_0(f(n_0)) = \psi_0(d_1m_0) = d_1\psi_0(m_0)$より$\psi_0(m_0) = 1$. よって$1\mapsto m_0$により定義される$R\to M$は$\psi\colon M\to R$の分裂を与えるので,$M = Rm_0\oplus\mathrm{Ker}\psi$.
まだ補題5から$\psi_0\circ f$は$N$から$d_1R$への準同型と見なせる.$\psi_0(f(n_0)) = d_1$であるので,$d_1\mapsto n_0$により定義される$d_1R\to N$は$\psi_0\circ f\colon N\to d_1R$の分裂を与え,$N = Rn_0\oplus\mathrm{Ker}(\psi_0\circ f)$.$f(n_0) = d_1m_0$であり,また明らかに$f(\mathrm{Ker}\psi\circ f)\subset \mathrm{Ker}\psi$.つまり$R\oplus \mathrm{Ker}(\psi_0\circ f)\simeq Rn_0\oplus \mathrm{Ker}(\psi_0\circ f) = N\to M = Rm_0\oplus \mathrm{Ker}\psi_0 \simeq R\oplus \mathrm{Ker}\psi_0$は \[ \begin{pmatrix} d_1 & 0\\ 0 & f|_{\mathrm{Ker}(\psi_0\circ f)} \end{pmatrix} \] と表される.冒頭の補題から$\mathrm{Ker}(\psi_0\circ f)$は自由,よってこれに対して帰納法の仮定を使うと$d_2,\ldots,d_r$が存在し,$d_2|\cdots|d_r$である.
$\psi\colon M\to R$を$M\simeq R^m$を通じて$(x_1,\ldots,x_m)\mapsto \sum_i a_ix_i$と書くと,$n = (y_1,\ldots,y_n)\in R^n\simeq N$に対して$\psi(f(n))$は$\sum_i a_id_iy_i$となる.とくにうまく$a_i,y_i$をとると$\psi(f(n)) = \mathrm{gcd}(d_1,\ldots,d_r)$となるので,$\mathrm{gcd}(d_1,\ldots,d_r)R\in \mathcal{C}$.$\mathrm{gcd}(d_1,\ldots,d_r)R\subset d_1R$と$d_1R$の極大性から$\mathrm{gcd}(d_1,\ldots,d_r)R = d_1R$,つまり$d_1|d_2$.
あまり(というかぜんぜん)こういうの詳しくはないのですが、画の書き方のようなモノなのでしょうか? それとも画の見方?? 個人的にはこんなに複雑な数式をWeb上に記述できるコト自体が驚きです。
返信削除数式を書くのにはKaTeXというものを使っています.技術の進歩ですね.
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