まじめに読む機会のなかったRiche-Williamsonの論文をここしばらく読んでいた.雑にメモ.間違っていないことは保証しない.
$G$を簡約群とするとアフィングラスマニアン$\mathcal{Gr}_{G}$には$\mathbb{G}_{\mathrm{m}}$がloop rotationで作用する.$\ell$を$G$の定義体の標数とは別の素数とし,$\mathcal{Gr}_{G}$の$\mu_{\ell}$固定部分を考えると,小さな一般アフィン旗多様体の直和に分解する.$\mathcal{Gr}_{G}$の岩堀部分群に関する軌道は余指標群$X_{*}(T)$でパラメータづけられるが,アフィンWeyl群の作用で移り合う分が一つの連結成分になっている.という話を層のレベルにアップグレードする.
考える層はIwahori-Whittaker層で,層の係数は標数$\ell$の体$\mathbb{k}$である.$G$が標数$p$の有限体上で定義されているとし,岩堀部分群$I$のpro unipotent radical $I_{u}$を考える.これの適当な非退化指標に応じてArtin-Schreier層を考え,$I_{u}$に関してそれに従うような$\mathcal{Gr}_{G}$上の層を考える.$\mathcal{G}_{G}$上の$I_{u}$軌道は$X_{*}(T)$でパラメータづけられるが,実際にIwahori-Whittaker層の台として出てくるのは正則支配的な元たちのなす集合$X_{*}(T)^{++}$だそうだ.
Iwahori-Whittaker偏屈層のなす圏を$\mathrm{Perv}_{\mathcal{IW}}(\mathcal{Gr}_{G},\mathbb{k})$と書く.これは最高ウェイト圏の構造を持ち,従って傾加群が考えられる.傾加群からなる圏を$\mathrm{Tilt}_{\mathcal{IW}}(\mathcal{Gr}_{G},\mathbb{k})$と書く.これが上の固定点をとる操作によりどうなるかを調べる.
そのために使われるのがSmith理論である.$\varpi = \mu_{\ell}$とおく.$\mathcal{F}$を$\mathcal{Gr}_{G}^{\varpi}$の$\mathbb{G}_{\mathrm{m}}$同変層とすると,そのgeometric stalkは$\varpi$の作用が入り$\mathbb{k}[\varpi]$加群となる.$D^{b}_{\mathcal{IW},\mathbb{G}_{\mathrm{m}}}(\mathcal{Gr}_{G}^{\varpi},\mathbb{G}_{\mathrm{m}})$を$\mathcal{Gr}_{G}^{\varpi}$上の$\mathbb{G}_{\mathrm{m}}$Iwahori-Whittaker複体の同変導来圏とし,そのうち各geometric stalkが$\mathbb{k}[\varpi]$加群としてperfect complexとなっているようなものからなる部分圏を$D^{b}_{\mathcal{IW},\mathbb{G}_{\mathrm{m}}}(\mathcal{Gr}_{G}^{\varpi},\mathbb{G}_{\mathrm{m}})_{\varpi\mathrm{-perf}}$とおいて,Verdier商 \[ \mathrm{Sm}_{\mathcal{IW}}(\mathcal{Gr}_{G}^{\varpi},\mathbb{k}) = D^{b}_{\mathcal{IW},\mathbb{G}_{\mathrm{m}}}(\mathcal{Gr}_{G}^{\varpi},\mathbb{G}_{\mathrm{m}}) / D^{b}_{\mathcal{IW},\mathbb{G}_{\mathrm{m}}}(\mathcal{Gr}_{G}^{\varpi},\mathbb{G}_{\mathrm{m}})_{\varpi\mathrm{-perf}} \] により$\mathrm{Sm}_{\mathcal{IW}}(\mathcal{Gr}_{G}^{\varpi},\mathbb{k})$を定義する.
$i\colon \mathcal{Gr}_{G}^{\varpi}\to \mathcal{Gr}_{G}$を包含写像とする.すると,まず次が成り立つ.
$\mathcal{F}$を$\mathcal{Gr}_{G}$上の$\mathbb{G}_{\mathrm{m}}$同変Iwahori-Whittaker複体とする. このとき$i^{*}\mathcal{F}$と$i^{!}\mathcal{F}$は$\mathrm{Sm}_{\mathcal{IW}}(\mathcal{Gr}_{G}^{\varpi},\mathbb{k})$において同型.
同型になった$i^{!}$と$i^{*}$を$i^{!*}$と書く.これは層の押し引きなどと可換である.($i^{!}$と$i^{*}$の都合のよい方をとって底変換定理を使えばよい.)特に,standard/costandard objectを保つ.
さて,パリティ層の理論は$\mathrm{Sm}_{\mathcal{IW}}(\mathcal{Gr}_{G}^{\varpi},\mathbb{k})$上でも機能する.$\mathcal{Gr}_{G}^{\varpi}$の各連結成分に対して偶奇をうまく定め,各連結成分上でそれに応じてodd/evenな層からなる部分圏を考えてそれを$\mathrm{Sm}_{\mathcal{IW}}^{\natural}(\mathcal{Gr}_{G}^{\varpi},\mathbb{k})$と書く.主定理は次の通り.
$i^{!*}$により圏同値$\mathrm{Tilt}_{\mathcal{IW}}(\mathcal{Gr}_{G},\mathbb{k})\simeq \mathrm{Sm}_{\mathcal{IW}}^{\natural}(\mathcal{Gr}_{G}^{\varpi},\mathbb{k})$を得る.
射がwell-definedであることは傾加群がパリティ複体でもあることから従う.忠実充満であることを見るにはパリティ層の理論から各cell上で$\mathrm{Hom}(\text{standard},\text{costandard})$がどうなっているかを比較すればよいのだが,これは両辺を直接計算することで得られる.(両辺ともに関わってくるcellは$\mathbb{A}^{n}$と同型であることに注意する:これがIwahori-Whittaker層を使っている理由でもある.)忠実充満なので直既約対象は直既約対象にうつるが,やはりパリティ層の理論から両辺ともに$X_{*}(T)^{++}$でパラメータづけられる直既約対象を持っていることがわかり,よって本質的全射となる.(正確には左辺は知られていて,右辺は高々そのくらいしかないことがパリティ層の理論からわかり,忠実充満であることと併せて実際にそれだけの直既約対象があることが同時に示される.)
帰結として次を得る:右辺は$\mathcal{Gr}_{G}^{\varpi}$の連結成分に応じて圏としての直和に分解するため,右辺もそうである.これを表現論につなげよう.$G^{\vee}$を$G$の双対のルート系を持つ$\mathbb{k}$上の分裂代数群とすると,幾何学的佐武対応とBezrukavnikov-Gaitsgory-Mirkovic-Riche-Riderの結果から$\mathrm{Rep}G^{\vee}\simeq \mathrm{Perv}_{\mathcal{IW}}(\mathcal{Gr}_{G},\mathbb{k})$であり,両辺の傾加群は対応する.よって先ほどの考察から$\mathrm{Tilt}(G^{\vee})$も直和に分解する.$D^{b}(\mathrm{Rep}G^{\vee})\simeq K^{b}(\mathrm{Tilt}G^{\vee})$から$D^{b}(\mathrm{Rep}G^{\vee})$も分解し,よって$\mathrm{Rep}G^{\vee}$も分解することが言える.これがlinkage principleに対応する.
linkage principleはもちろん知られていた話だが,もう少し頑張ると直既約傾加群の指標を$\ell$-Kazhdan-Lusztig多項式で書く式が得られて,これは新しい結果.さらにRiche-Williamsonの昔の予想(Hecke作用の存在)も示せるらしい.こちらはまだ読んでいないけど$\mathrm{Perv}_{\mathcal{IW}}(\mathcal{Gr}_{G},\mathbb{k})$にはもともとHecke圏=パリティ層の圏が畳み込みで作用しているので,それを上の分解に応じて分けるのかなと推測.
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