続き
標数p>0の場合
本題.kを標数p>0の閉体,Gをk上の連結簡約代数群とし,Gの代数的な表現のなす圏RepGを考える.極大トーラスTを固定し,X=X∗(T),Φ⊂Xをルート全体とする.またX+を支配的な元全体とする.(記号を変えて)Weyl群をWfと書き,w∈W=Wf⋉ZΦを(双対群の)affine Weyl群とする.これは“p-dilated dot action”によりXに作用する.この作用をw⋅λ(w∈W,λ∈X)と書く.
λ∈X+に対して最高ウェイトλの既約表現L(λ)が存在し,RepGの既約表現はこれで尽きる.またp>h(hはCoxeter数)と仮定し,λ0∈X+を全ての正ルートαに対して0>⟨α,λ0+ρ⟩<pを満たすものとして固定し,Rep0GをL(λ0)を含むブロックとする.Rep0Gの既約表現全体はL(w⋅λ0)となる.なお,w⋅λ0は支配的である必要がある.これは次のように言い換えられる.fWをWf\Wの最短長さを持つ代表元全体とすると,w↦w⋅λ0によりfW≃W⋅λ0∩X+となる.
Rep0Gも最高ウェイト圏であり,標準加群Δ(w),余標準加群∇(w)を持ち,{[Δ(w)]}はGrothendieck群[Rep0G]の基底となる.よって同型[Rep0G]≃⨁w∈fWZwを得る.この場合もwall-crossing functor Ξsが,今度はaffine Weyl群Wの単純鏡映全体Sの元sごとに存在し,やはり[Rep0G]は右W表現の構造を持つ.これを加味して右辺を変えると,次のW表現としての同型:
[Rep0G]≃sgn⊗Z[Wf]Z[W]
を得る.ただしsgn(w)=(−1)ℓ(w)は符号表現である.
この同型をcategorifyしたい.
diagramatic Hecke category
圏OにおけるBSの類似が必要となる.BSは係数が標数正でも定義されるが,これは正しい対象にはならない.その代わりに,Elias-Williamsonにより導入されたdiagramatic Hecke category Dを使う.
Dはその名の通りdiagramaticに定義される.Dの対象はSの元の列(s1,…,sr)である.これを横に点々と並べて書く.射はこの点々の間を結ぶグラフ全体(で特別な形をしたもの)であり,適当な関係式(すげー複雑)で割られている.構成はやたら複雑だが,BSと同じような性質を持っている.
- 次数構造を持つ加法圏である.
- (s1,…,sr)⊗(s1′,…,sr′′)=(s1,…,sr,s1′,…,sr′′)によりモノイド圏の構造が入る.
- 各w∈Wに対して対象Bwが定まり,Dのindecomposableな対象はこれとそのシフトで尽きる.
- 環同型ch:[D]≃Hが存在する.
- 係数体の標数が0ならばBSgrと圏同値になる..
さきほどの同型の右辺はZ[W]ではなかったので,これから少し変更する必要がある.圏Dasphを,対象はDと同じもの,射を
HomDasph(X,Y)=HomD(X,Y)/I(X,Y),
ただしI(X,Y)はXからYへの射で,あるw∉fWに対してBwを経由するもの,とすることで定める.すると,chは同型
[Dasph]≃sgn⊗HfH
を定める.ただしHfは有限Weyl群に対するHecke環で,sgnはその符号表現.
Dの対象をテンソルすることで,DasphにはDが作用する.そこから[Dasph]は[D]≃H加群の構造を持つ.上の同型はH加群としての同型である.
ch(Bw)をp-canonical basisという.
この基底を計算するアルゴリズムがある.また,wを固定すると,十分大きなpに対してこれはKazhdan-Lusztig基底と一致する.ただし,このpをwによらずにとることはできない(らしい).
tilting加群
X∈RepGのフィルトレーションがΔ-flag(resp. ∇-flag)とは,その隣接商がΔ(λ)(resp. ∇(λ))と同型なことである.XはΔ-flagと∇-flagを持つ時,tiltingであると呼ばれる.これは次の性質を持つ.
- 直和,直和因子について閉じていて,tilting加群全体のなす圏Tilt(RepG)は加法圏.
- wall-crossing functorについて閉じている.よって[Tilt(Rep0G)]はZ[W]加群の構造を持つ.
- XのΔ-filtrationの隣接商におけるΔ(λ)の数を(X:Δ(λ))と書くと,これはΔ-flagの取り方によらず,[X]↦∑w∈fW(X:Δ(w⋅λ0))wはW表現としての同型[Tilt(Rep0G)]≃sgn⊗Z[Wf]Z[W]を与える.
- λ∈X+に対してindecomposable tilting加群T(λ)が存在し,Tilt(RepG)のindecomposable tilting加群はこれで尽きる.
というわけで予想は次の通り.DdegasphをDasphの次数を忘れたものとする.
同型Tilt(Rep0G)≃DdegasphでT(w⋅λ)をBwに送るものが存在する.
もしこの予想が正しければ,右辺には圏Dが作用するので,左辺にも作用することになる.これからRep0GにDが作用する.
Rep0GへのDの作用が存在する.(生成元の行き先などは指定されている.)
実は後ろの予想は前の予想を導く.
もしRep0GへのDの作用が存在すれば,Tilt(Rep0G)≃Ddegasph.
もちろん関手は作用を使ってB↦T(λ0)Bにより与えられる.Homの間の同型を示せば良いのだが,wall-crossing functorの解析をうまくしているように見える.(tilting加群の方が少し大変っぽい.前者と次元の評価でしている.)
予想の帰結として,[T(w⋅λ)]の指標はp-canonical basisで記述されることが従う.ここまでの話は(λ0が存在しなければならないので)p>hを仮定していたが,この事実は常に成り立つと予想している.もちろん,λ0が存在すれば,translation functorによってこれはλ0の場合に帰着される.
予想から,あれ,Rep0GにRの作用が入るのかと思ったけど,Dasphに言った段階でR→kを経由してしまうらしい.(s=sαに対してα∨倍がBe→Bs→Beで実現できるので.)
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