よく知られている次の性質,証明をきちんと見たことがない気がしてきたので考えてみた.Σ⊂Vを有限ルート系,Σ+⊂Σを正ルート系とする.(特にΣはVを生成する.)v∈VがΣ+に関して支配的ならば,v∈R≥0Σ+.
WをWeyl群とする.次の簡単な事実に注意する:v∈Vが支配的ならばw∈Wに対してv−w(v)∈R≥0Σ+.これはwの長さに関する帰納法で簡単に示せる.特にw(v)≤vである.
Vには与えられた正ルート系と整合的な,線型な全順序が与えられているとする.Πを単純ルート全体とし,v=∑α∈Πcααとcα∈Rをとる.Θ={α∈Π∣cα<0}とおき,Θ≠∅として矛盾を導く.wΘ=⟨sα∣α∈Θ⟩とおく.w∈WΘを最長元とする.このとき,α∈Θならばw(α)<0.cα<0でもあるのでcαw(α)>0である.特にcαw(α)>0>cαα.
α∈Π∖Θとする.このときβ∈Θに対して⟨α,β∨⟩≤0であるのでαはΘに関して反支配的.よって上に注意したことにより(支配的でなく反支配的であることに注意して)w(α)≥α.cα≥0であるので,cαw(α)≥cαα.以上のことから,Θ≠∅により
w(v)=α∈Θ∑cαw(α)+α∈Π∖Θ∑cαw(α)>α∈Θ∑cαα+α∈Π∖Θ∑cαα=v.
これは最初に述べた事実に反する.
または次の通り.こっちの方が簡単かな.Θは上と同様とし,x=∑β∈Σ+∩ZΘβ∨とおくと,よく知られているとおりこれはΘに関して正則かつ支配的,つまりα∈Θならば⟨α,x⟩>0.よって⟨∑α∈Θcαα,x⟩<0.またβ∈Σ+∩ZΘ,α∈Π∖Θに対して⟨α,β∨⟩≤0であるので⟨α,x⟩≤0.よって⟨∑α∈Π∖Θcαα,x⟩≤0.よって
⟨v,x⟩=⟨α∈Θ∑α,x⟩+⟨α∈Π∖Θ∑α,x⟩<0.
一方xは正ルートの和であるので,これはvが支配的であることに反する.
ΣがVを生成するとは限らない場合は,結論が次のようになる.v=v1+v2,v1∈R≥0Σ+,⟨v2,α∨⟩=0 (α∈Σ).これはV1=RΣ,V2={v∈V∣⟨v2,α∨⟩=0 (α∈Σ)}とおくとV=V1⊕V2となるので,この分解に即してv=v1+v2とし,v1∈V1に上を使えばよい.
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