学会でいけがみくんに教えてもらいながら導来関手が定義できた気がするのでメモ.一緒にいた方々に感謝.
問題
環Aに対して,Mod(A)でA加群のなす圏を表す.本当に全部を考えているので,対象全体は集合ではないが,クラスではある.環A,Bと,左完全関手F:Mod(A)→Mod(B)が与えられたときに,導来関手RiF:Mod(A)→Mod(B)を定めたい.よくある定義は次の通り.
M∈Mod(A)に対して,入射分解0→M→I∙=(I0→⋯→Ii→Ii+1→⋯)をとる.これに対してRiF(M)=Hi(F(I∙))と定める.
もちろん入射分解の取り方は一意ではない.しかし,次が成り立つ.
I∙とJ∙をMの二つの入射分解とすると,ホモトピー同値を除いて一意的にホモトピー同型I∙→J∙が存在する.特に自然にHi(F(I∙))≃Hi(F(J∙)).
というわけで同型類は自然に定まる.
しかし,関手を定義する際にはMod(B)の対象を定めなければならなく,その同型類を定めればよいという物ではない.実際には,例えば宇宙を固定したりしてその中で全て考えれば特に問題はない.しかし,それはZFCよりも真に強い公理系を加えたことになる.という感じで何かモヤモヤするのである…….
というわけで,ZFC内でRiFという関手を定めることを試みる.
準備:集合の階数
クラスがあった時に,その部分として集合を取り出す方法として,その集合の階数を使う方法がある.Wikipediaにも項目があったが,繰り返し.順序数については既知とする.
順序数αに対して,集合Vαを次で定義する.
- V∅=∅.
- Vα+1=P(Vα)(冪集合).
- αが極限順序数ならばVα=⋃β<αVβ.
気分的には,Vα+1の元は「中括弧がα個ネストされている集合」である.
任意の集合Xに対してある順序数αが存在し,X∈Vα+1.
集合Xに対して,X∈Vα+1を満たす最小の順序数αをXの階数と呼ぶ.
一般に空でないクラスCに対して,{X∈C∣XはC内で最小の階数を持つ}は,あるαに関してVαの部分集合であるので集合である.
定義
M∈Mod(A)を固定する.IをMの入射分解からなるクラスとする.これは集合にはならない.これに対して,I′={I∙∈I∣I∙はI内で最小の階数を持つ}とおく.上の注意からこれは集合である.I∙,J∙∈I′に対して,ホモトピー同型J∙→I∙から誘導される同型Hi(F(J∙))→Hi(F(I∙))をfI∙J∙と書く.定理2から,これはホモトピー同型の取り方によらない.これを使い
RiF(M)=→limHi(F(I∙))={(xI∙)∈I∙∈I′∏Hi(F(I∙))∣fI∙J∙(xJ∙)=xI∙}
とおく.
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