2015年4月30日

KaTeXを使いまくった感がないのでもう少し書いてみる.前回の続き

さて,$\sum_{k = 1}^7k^n$を考えていたわけですが,$1$から$7$なんてけちくさいこと言わず,数字全部足してみましょう,つまりこんなものを考えてみる. \[\sum_{x} x^r\] $r$も実数で考えることにしましょう.負の数の冪は怖いので,$x$を正にしておくことにします.和だとどう考えても発散するので,積分に置き換えておきましょう. \[ F(r) = \int_0^\infty x^rdx \] なんだか計算できる積分な気がしますが,ここで計算しては負けです.計算したら無限大になるし.さっきは$k$を$2k$や$3k$に変えて計算してみました.同じように,$a > 0$として$x$を$ax$に変更してみます.積分の変数変換です.$x = ay$とすると$dx = ady$なのでこうなります. \[ F(r) = \int_0^\infty a^ry^r ady = a^{r + 1}F(r) \] と言うわけで,$a^{r + 1} = 1$でなければ$0$,つまり$r\ne -1$ならば$F(r) =0$です.$r= -1$の時は(計算したら負けといいながら)計算してみましょう, \[ F(-1) = \int_0^\infty \frac{1}{x}dx = \left[\log x\right]_0^\infty = \infty - (-\infty) = \infty \] 無限大です.つまり$F$は$r = -1$で無限大,それ以外で$0$な関数です.そう,ディラックのデルタ関数ですね.

このような式はディラックのデルタ関数のFourier変換として現れます.関数$h$に対してそのFourier変換$\hat{h}$が \[ \hat{h}(r) = \int_{-\infty}^\infty h(x)e^{-2\pi irx}dx\] により定義できて,$\hat{\hat{h}}(r) = h(-r)$を満たします.この定義式にディラックのデルタ関数を入れてみます.すると \[ \hat{\delta}(r) = \int_{-\infty}^\infty \delta(x)e^{-2\pi irx}dx = e^{2\pi ir\times 0} = 1\] となり,よって$\hat{\hat{h}}(r) = h(-r)$という式は($\delta(-r) = \delta(r)$なので) \[ \delta(r) = \int_{-\infty}^\infty e^{-2\pi irx}dx \] となります.$y = e^x$と変換してみると,$dy = e^xdx = ydx$から$dx = y^{-1}dy$なので \[ \delta(r) = \int_0^\infty y^{-2\pi ir - 1}dy\] です.$r\ne 0$で右辺が$0$になることは,さっきと同じような形で「確認」できます.

もちろん右辺は収束しないので,このままの式は無意味です.そもそもFourier変換の定義式自身,積分が発散するような場合には意味を持ちません.というか意味を持たないからこそ,デルタ関数という「関数でないもの」が現れるのです.デルタ関数は,関数ではなく超関数と呼ばれる対象です.(大体の)普通の関数は超関数と見なせますが,そうでないものもあります.さて,積分が収束するような関数に対して定義されていたFourier変換ですが,更に「緩増加超関数」($x\to \pm\infty$に行ったときに「あまり大きくならない」超関数)と呼ばれる超関数に拡張することができます.デルタ関数(大きくないどころか$0$)やずっと$1$という関数(大きくはなっていない)は緩増加超関数の例で,そこで互いにFourier変換で移りあいます.これが上の式の正当化です.

実はこの式,殆ど$\hat{\hat{h}}(r) = h(-r)$と同等な式です.$\hat{\hat{h}}$を計算してみると, \[ \hat{\hat{h}}(r) = \int_{-\infty}^\infty \int_{-\infty}^\infty h(y)e^{-2\pi i yx}e^{-2\pi ixr}dydx \] です.積分順序を変更すると(できるのかは気にしない) \[ \int_{-\infty}^\infty \int_{-\infty}^\infty h(y)e^{-2\pi i x(y + r)}dxdy = \int_{-\infty}^\infty \delta(y + r)h(y)dy = h(-r) \] となります.

と言うことは,です,最初の京大の問題からも「Fourier変換」が得られると言うことです.やってみます.六個からなる数列$a_1,a_2,\ldots,a_6$があったとして,新しい数列$\hat{a}_1,\ldots,\hat{a}_6$を \[ \hat{a}_n = f\left(\sum_{k = 1}^6 a_k k^n\right) \] で定めてみます.また,数列$\check{a}_n$を \[ \check{a}_n = f\left(6\sum_{k = 1}^6 a_k n^{6 - k}\right) \] として定めます.(Fourier変換と違って逆ともとのが違う形になります.$6$倍されていたり$6 - k$倍になっていたりするのは後々の都合です.)$\hat{\check{a}}$を計算してみましょう.これは次の値を$7$で割った余りです. \[ 6\sum_{k = 1}^6 \sum_{l = 1}^6 a_l k^{6 - l}k^n = 6\sum_{l = 1}^6 a_l \sum_{k = 1}^6 k^{6 - l + n} \] 先に$k$の和を計算します.$\sum_{k = 1}^6 k^{6 - l + n}$はまさに問題の2番です.これを$7$で割った余りは,$6 - l + n \ne 6$なら$0$.つまり$l\ne n$ならば$0$です.また$l = n$ならば$6$.従って計算結果は$f(36a_n) = f(a_n)$となります.つまり(もし$0\le a_n\le 6$ならば)$\hat{\check{a}}_n = a_n$.$a_n$を$a_1 = \cdots = a_5 = 0$, $a_6 = 6$とすると問題2になります.$\check{\hat{a}}_n = a_n$も確認できます.今度使う式は$f(\sum_{k = 1}^6 n^k)$が$n = 1$の時に$6$,それ以外で$0$になるというもの.これは等比数列の和の公式とFermatの小定理で確認できます.

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