2016年7月9日

この前のBhargavaの話でこんなんが出てきた.記憶とGoogle検索のみを頼りに書いているので正しいとは限らない.連分数 x=1+11+11+11+11+ x = 1 + \dfrac{1}{1 + \dfrac{1}{1 + \dfrac{1}{1 + \dfrac{1}{1 + \ddots}}}} を考えてみる.収束することを仮定すれば値を求めるのは難しくない.この 1+11+11+11+11+ 1 + \dfrac{1}{\color{red}{1 + \dfrac{1}{1 + \dfrac{1}{1 + \dfrac{1}{1 + \ddots}}}}} 赤くなっている部分が全体と同じなので,この部分をxxに置き換えると x=1+1x x = 1 + \frac{1}{x} となる.分母を払って整理すれば x2x1=0 x^2 - x - 1 = 0 となるので,二次方程式を解けば x=1+52 x = \frac{1 + \sqrt{5}}{2} となる.黄金比ですね.

もちろんこんなことをRamanujanが考えた,という話ではない.(いや考えたかもしれないがこれだけで終わっては話題にならない.)次のような一般化を考える. R(q)=1+q1+q21+q31+q41+ R(q) = 1 + \dfrac{q}{1 + \dfrac{q^2}{1 + \dfrac{q^3}{1 + \dfrac{q^4}{1 + \ddots}}}} 今計算したのはR(1)R(1)というわけだ.しかしこうなると 1+q1+q21+q31+q41+ 1 + \dfrac{q}{\color{red}{1 + \dfrac{q^2}{1 + \dfrac{q^3}{1 + \dfrac{q^4}{1 + \ddots}}}}} の赤い部分はもうR(q)R(q)と同じじゃないので,さっきみたいには計算できない.Ramanujanはこんなことを言ったようだ.俺はR(e2π)R(e^{-2\pi})を計算できる.答えは R(e2π)=1+e2π1+e4π1+e6π1+e8π1+=(5+52+1+52)e2π/5 R(e^{-2\pi}) = 1 + \dfrac{e^{-2\pi}}{1 + \dfrac{e^{-4\pi}}{1 + \dfrac{e^{-6\pi}}{1 + \dfrac{e^{-8\pi}}{1 + \ddots}}}} = \left(\sqrt{\frac{5 + \sqrt{5}}{2}} + \frac{1 + \sqrt{5}}{2}\right)e^{-2\pi/5} だ.もうなんかこの式一つですごい.(ちなみにKaTeXの例としてこの式がある.)実はR(eπr)R(e^{-\pi\sqrt{r}})を正の有理数rrに対して計算できるぜ,とも言ったそうだ.なお,この値は殆ど代数的数になる.正確にはR1(q)=R(q)q1/5R_1(q) = R(q)q^{-1/5}とおくと,正の有理数rrに対してR1(e2πr)R_1(e^{-2\pi \sqrt{r}})は代数的数になる.

ネタばらしとしては,このR1(q)R_1(q)はレベル5のモジュラー関数のqq展開を与える,ということらしい.なので,虚数乗法論からR(e2πr)=R1(e2π1r)R(e^{-2\pi \sqrt{r}}) = R_1(e^{2\pi \sqrt{-1}\sqrt{-r}})は代数的となり,Q\mathbb{Q}上の二次拡大のAbel拡大を与える,ということのようだ.たとえば上のR1(e2π)R_1(e^{-2\pi})Q(1)\mathbb{Q}(\sqrt{-1})のAbel拡大を与える.まぁでもRamanujanはそういうことは言ってないんでしょうが…….

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