$A$を$k$代数,$M$を単純左$A$加群,$D = \mathop{\mathrm{End}}_A(M)$とおく.$M$は自然に$D$加群である.次を示すのだった.
$A$は代数的かつ$0$以外の冪零元を持たないとする.このとき単純左$A$加群$M$は$D = \mathop{\mathrm{End}}_A(M)$上一次元である.
次の性質は結構有名.
$A$の$\mathop{\mathrm{End}}_D(M)$における像は次の意味で稠密である:$x_1,\ldots,x_r\in M$,$f\in \mathop{\mathrm{End}}_D(M)$とすると,ある$a\in A$が存在して$ax_1 = f(x_1),\ldots,ax_r = f(x_r)$が成り立つ.
$x = (x_1,\ldots,x_r)\in M^{\oplus r}$とおく.$M^{\oplus r}$は半単純であるので,$Ax\subset M^{\oplus r}$は直和因子.$p\colon M^{\oplus r}\to Ax$を射影とすると,$p$は$A$と可換なので$p\in D$であり,射影の定義から$Ax = \{y\in M^{\oplus r}\mid py = y\}$.$p\in D$であるから$f\in \mathop{\mathrm{End}}_D(M)$に対して$f$と$p$は可換なので,$Ax$は$f$で保たれる.特に$f(x) = ax$となる$a\in A$が存在し,これが補題の$a$を与える.
もし$M$が$D$上有限次元ならば,$x_1,\ldots,x_r$を基底にとればこれは$A\to \mathop{\mathrm{End}}_D(M)$が全射であることを示している.より一般に,有限次元部分$D$ベクトル空間$M'\subset M$に対して,$A' = \{a\in A\mid a(M')\subset M'\}$とおく.$x_1,\ldots,x_r\in M'$を基底とし,$f\in \mathop{\mathrm{End}}_{D}(M')$に対して,それを延長して$F\in \mathop{\mathrm{End}}_D(M)$をとる.補題からある$a\in A$が存在し$F(x_1) = ax_1,\ldots,F(x_r) = ax_r$が成り立つが,$F(x_i) = f(x_i)$より$f(x_i) = ax_i$.特に$ax_i\in M'$であるので$a\in A'$で,$M'$上の線形写像として$a = f$.つまり$A'\to \mathop{\mathrm{End}}_D(M')$は全射である.
さて,次に注意する.
$A$が代数的かつ$0$以外の冪零元を持たないとする.このとき$A$の部分代数および商代数も代数的かつ$0$以外の冪零元を持たない.
部分代数が代数的かつ$0$以外の冪零元を持たないことは明らか.また商代数が代数的となることも明らかである.よって商代数が$0$以外の冪零元を持たないことを示せばよい.$f\colon A\to B$を全射準同形とする.$b \in B$が冪零であるとし,$f(a) = b$となる$a\in A$をとる.
$a$は代数的であるので,ある多項式$\varphi$により$\varphi(a) = 0$となる.$\varphi$をこのような多項式の中で次数が最小のものとする.$\varphi(X)$を$\varphi(X) = \psi(X)X^s$,($s\in\mathbb{Z}_{\ge 0}$,$\psi(0)\ne 0$)と分解する.$s > 1$とし,$y = \psi(a)a$とおくと,$\varphi$の次数の最小性から$y\ne 0$であるが,$y^s = \psi(a)^sa^s = 0$となり$y$は$0$でない冪零元となる.これは$A$に関する仮定に反する.従って$s\le 1$であり,特に$\psi(a)a = 0$.
$\psi(a)a = 0$より$\psi(b)b = f(\psi(a)a) = 0$である.一方$b$は冪零であるので,$b^r = 0$となる$r\in\mathbb{Z}_{>0}$が存在する.$X$に関する多項式$\psi(X)X$と$X^r$の最大公約式は$X$であるので,これより$b = 0$となる.
目的の補題を示そう.$M'\subset M$を$D$上有限次元のベクトル空間とする.すると$A$の部分環$A'$と全射$A'\to \mathop{\mathrm{End}}_D(M')$があるのだった.$A$が代数的かつ冪零元を持たないことから,上の補題により$\mathop{\mathrm{End}}_D(M')$も冪零元を持たない.しかし$\dim_{D}(M') > 1$ならば$\mathop{\mathrm{End}}_D(M')$は冪零元を持つことが(簡単な行列計算により)わかるので,$\dim_D(M')\le 1$.$M'\subset M$は任意の有限次元ベクトル空間だったので,$\dim_D(M)\le 1$でなければならない.
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