必要があり,前からさぼっていたDyerのReflection subgroups of Coxeter systemsを眺めている.メインはCoxeter群の鏡映で生成される部分群がまたCoxeter群(放物型とは限らない)になるというもの.メモがてら.
$G$を群,$S\subset G$を生成系とし,任意の$s\in S$は位数$2$であるとする.(Dyerは位数の制限なしにやっているがCoxeter系に限ればこれで十分.)$T = \bigcup_{g\in G}gSg^{-1}$とおく.
最初にCoxeter群の特徴づけがあるcocycleの存在で行われている.$g\in G$は$s_{1},\ldots,s_{l}\in S$により$g = s_{1}\cdots s_{l}$とかけるが,$l$が最小の時reduced expressionと呼び$l = \ell(g)$と書く.よく知られている通り,$(G,S)$がCoxeter系であるための条件はexchange conditionが成り立つことである.(例えばBourbaki,Lie Groups and Lie algebras,Chapter IV, 1.6 Theorem 1)
$(G,S)$がCoxeter系であるための必要十分条件は次のexchange conditionが成り立つこと:$g\in G$,$s\in S$とし,$\ell(sg) < \ell(g)$とする.この時任意のreduced expression $g = s_{1}\cdots s_{l}$に対してある$i$が存在し, \[ ss_{1}\cdots s_{i - 1} = s_{1}\cdots s_{i} \] が成り立つ.
Coxeter系がこの条件を成り立つことは次を使い示される.
$s \in S$,$g\in G$とし$\ell(sg) < \ell(g)$とする. $sg$のreduced expression $t_{1}\cdots t_{l - 1}$をとると$g = st_{1}\cdots t_{l - 1}$はreduced expression. この表示から$s\in N'(g)$なので,ある$i$により$s = t_{i}$. これを書き換えればexchange conditionを得る.
Dyerはこれをあるcocycleの存在で置き換えている.$M_{G} = \bigoplus_{t\in T}\mathbb{F}_{2}t$を$T$の元を基底とする$\mathbb{F}_{2}$部分空間とする.$g\cdot t = gtg^{-1}$によりこれは$G$の表現である.$M_{G}$の元は$T$の有限部分集合と一対一に対応する.従って上の$N'(g) = \{t_{1},\ldots,t_{l}\}$を考えることは$N(g) = \sum_{i}t_{i}\in M_{G}$を考えることと同じ.この$N$が満たすべき条件は次のように公理化できる.
$N\colon G\to M_{G}$をcocycle(つまり$N(gh) = N(g) + g\cdot N(h)$を満たす)であって,$x\in X$ならば$N(x) = x$となるものとする.この時$(G,X)$をreflection systemと呼ぶ.以下このような$N$が与えられているとする.$N(g) = \sum_{t}N_{t}(g)t$と$N_{t}(g)\in \mathbb{F}_{2}$を定める.次は定義を繰り返し使えばよい.
$x_{1},\ldots,x_{l}\in X$に対して,$g = x_{1}\cdots x_{l}$および$t_{i} = (x_{1}\cdots x_{i - 1})x_{i}(x_{1}\cdots x_{i - 1})^{-1}$とおく. この時$N(g) = \sum_{i}t_{i}$.
上の補題においてさらに$g = x_{1}\cdots x_{l}$がreduced expressionであるとする. この時$i\ne j$ならば$t_{i}\ne t_{j}$. 特に$\{t_{1},\ldots,t_{n}\} = \{t\in T\mid N_{t}(g)\ne 0\}$はreduced expressionのとり方によらない.
$i < j$,$t_{i} = t_{j}$とすると$g = x_{1}\cdots x_{i - 1}x_{i + 1}\cdots x_{j - 1}x_{j + 1}\cdots x_{l}$となりreduced expressionであることに反する.
従って$(G,S)$がreflection systemならばCoxeter系である.
部分群$G'\subset G$に対して,射影$\mathrm{pr}_{G'}\colon M_{G} = \bigoplus_{t\in T}\mathbb{F}_{p}t\to \bigoplus_{t\in T\cap G'}\mathbb{F}_{p}t = M_{G'}$を考える.次は定義から容易にわかる.
特に$g\in G'$ならば$gG'g^{-1} = G'$であるから($G'$が部分群なので)$\mathrm{pr}_{G'}$は$G'$準同型.このことから次がわかる.
$G'\subset G$が部分群ならば$\mathrm{pr}_{G'}\circ N\colon G'\to M_{G'}$はcocycle.
よってある部分集合$X' \subset G'$で,$x\in X'$ならば$\mathrm{pr}_{G'}(N(x)) = x$となるものが存在すれば$(G',X')$はCoxeter系になる.このような$X'$は安直に \[ X(G') = \{t\in G'\cap T\mid \mathrm{pr}_{G'}(N(t)) = t\} \] とおくことで得られる.次を示せば$G'$が$T\cap G'$で生成されているならば$(G',X(G'))$がCoxeter系であることが従う.
$T\cap G'$は$X(G')$で生成される部分群に含まれる.
$t\in T\cap G'$とし,主張を$\ell(t)$に関する帰納法で示す. $X(G')$で生成される部分群を$\langle X(G')\rangle$と書く. $\ell(t) = 1$,すなわち$t\in S$ならば$t\in X(G')$なので明らか. $\ell(t) > 1$とする. $t$のreduced expressionは$s_{1}\cdots s_{l}s's_{l}\cdots s_{1}$という形をしているので(有名事実だがこの後に証明を書くことにする),ある$s\in S$が存在して$\ell(sts^{-1}) < \ell(t)$. 帰納法の仮定から$sts^{-1}\in \langle X(sG's^{-1})\rangle$. $s\in G'$ならば$X(sG's^{-1}) = X(G')$および$s\in X(G')$なのでよい. $s\notin G'$の時に$X(sG's^{-1}) = sX(G')s^{-1}$となることを示そう. $g\in X(sG's^{-1})$とし,$s^{-1}gs\in X(G')$を示す. $\mathrm{pr}_{G'}(N(s^{-1}gs))$を計算しよう. cocycle条件により \[ N(s^{-1}gs) = N(s^{-1}) + s^{-1}\cdot N(g) + s^{-1}g\cdot N(s) = s^{-1} + s^{-1}\cdot N(g) + s^{-1}g\cdot s \] であるが,$s\notin G'$から$\mathrm{pr}_{G'}(s^{-1}) = 0$. また$g\in sG's^{-1}$なので,$s^{-1}g\cdot s\in (s^{-1}gs)\cdot s$はやはり$s\notin G'$から$G'$に入らない. 従って,$g\in X(sG's^{-1})$から \[ \mathrm{pr}_{G'}(N(s^{-1}gs)) = \mathrm{pr}_{G'}(s^{-1}\cdot N(g)) = s^{-1}\cdot \mathrm{pr}_{sG's^{-1}}(N(g)) = s^{-1}\cdot g \] となり$s^{-1}gs\in X(G')$となる.
書くといったやつ.
$t\in T$とすると,あるreduced expressionで$t = s_{1}\cdots s_{l}ss_{l}\cdots s_{1}$の形のものがある.
$t$の長さを$2l + 1$とし,とりあえず簡約表示$t = s_{1}\cdots s_{2l + 1}$をとる.$tt = 1 < t$なので,exchange conditionから$ts_{1}\cdots s_{i} = s_{1}\cdots s_{i + 1}$となる$i$が存在する.$t = s_{1}\cdots s_{i}s_{i + 1}s_{i}\cdots s_{1}$.右辺の単純鏡映の数は$\ell(t) = 2l + 1$以上なので$i\ge l$.一方 \[ t = t^{-1}tt = (s_{1}\cdots s_{2l + 1})^{-1}s_{1}\cdots s_{i}s_{i + 1}s_{i}\cdots s_{1}(s_{1}\cdots s_{2l + 1}) = s_{2l + 1}\cdots s_{i + 2}s_{i + 1}s_{i + 2}\cdots s_{2l + 1} \] となるので$i\le l$.よって$t = s_{1}\cdots s_{i}s_{i + 1}s_{i}\cdots s_{1}$は簡約表示で,$s = s_{i + 1}$とおけばよい.
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