arXiv:1512.08296を眺めている(≠読んでいる).メモ.あっている保証はない.間違っていたら教えてください.
圏Oの場合
まずはもととなる圏Oの場合から.O0を圏Oの自明表現を含むブロックとすると,この圏の既約表現はWeyl群Wでパラメトライズされる:{L(w)∣w∈W}.そしてこの圏は最高ウェイト圏なので,標準加群{Δ(w)}が存在する.Grothendieck群[O0]は{[Δ(w)]}を基底とする自由Z加群である.従って自由Z加群としての同型[O0]≃Z[W]が存在する(右辺は群環).
この同型は自由Z加群以上の構造を持つ.s∈Wを単純鏡映とし,Ξsをそれに付随するwall-crossing functorとすると,[ΞsΔ(w)]=[Δ(w)]+[Δ(ws)]が成り立つ.つまり,[O0]へのWの右作用を,単純鏡映s∈Wに対して[X]↦[ΞsX]−[X]で定めると,同型[O0]≃Z[W]は右W加群としての同型になる.
Soergel双加群により,この同型をcategorifyすることができる.BSをSoergel双加群の圏としよう.hをCartan部分代数とすると,BSはR=S(h)双加群の,直和および直和因子について閉じている部分圏で,また更にテンソル⊗Rによってモノイド圏の構造を持つ.従って,BSの分裂Grothendieck群[BS]は積構造を持つ.更にcharacter map ch:[BS]→Z[W]が存在し,これは環同型を与える.
上の同型の圏バージョンは次の通り.BSCをBSから⊗RCして得られるものとする.またProjO0をO0の射影加群のなす部分圏とする.このとき
ProjO0≃BSC
が成り立つ.
更に幾何学的対象と次のように結びつく.G/Bを旗多様体とし,Perv(B)(G/B,C)ssをB軌道に対してスムーズなG/B上の半単純偏屈層全体のなす圏とすると,圏同値BSC≃Perv(B)(G/B)ssが成り立つ.
圏同値に対する注意が二つほど.BSはR双加群の圏の部分圏だったが,これを次数付きR双加群の圏に置き換えることで,次数構造を持つ圏BSgrを得る.次数のずらしX↦X⟨1⟩はGrothendieck群の間の同型[BSgr]→[BSgr]を与える.これをvと書くと[BSgr]はZ[v,v−1]加群となる.すると,環同型[BS]≃Z[W]は,同型
ch:[BSgr]≃H
に持ち上がる.ここで右辺は有限Coxeter系に付随するHecke環である.同様に,Perv(B)(G/B,C)ssもPerv(B)(G/B,C)ssの対象のshiftの直和のなす圏D(B)b(G/B,C)ssに変更することで,次数構造X↦X[1]が入り,さきほどの同型はZ[v,v−1]加群としての同型となる.最後の一つ,ProjO0には次数構造が見えない.むしろ,上の二つの次数構造を引き戻すことで,ProjO0に次数構造を入れることができる.ProjO0はO0自身を支配するので,O0にも次数が入る(Beilinson-Ginzburg-Soergel).
対象に対して,この圏同値では次のような対応がある:P(w)⟷Bw⟷ICw.ここでP(w)はL(w)の射影被覆,ICwはBwB/B⊂G/Bに対応する単純偏屈層,またBwはindecomposable Soergel双加群である.(実際にはBwはBSgrで定義され,ここでのBwはそれが落ちてきたもの.)indecomposable Soergel双加群は純粋にBSgrのみで定義される.次の予想はSoergel予想と呼ばれる.
ch(Bw)∈HはKazhdan-Lusztig基底.
もちろんこの文脈では,これは圏同値BSgr≃D(B)b(G/B,C)ssとKazhdan-Lusztigによる定理の帰結にしかならないが,Soergel双加群は任意の生成元の数が有限なCoxeter系に対して定義することができ,同じ予想を立てることができる.(Elias-Williamsonにより解決済み.)
なんか疲れたので本題は明日に.
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