メモ
Coxeter群(W,S)とその表現Vが与えられているとする.Vがreflection faithfulである時,SoergelはSoergel bimoduleの理論を作った.ただ,このreflection faithfulという条件はちょっと強すぎる.例えばW=W0⋉X∗(T)がaffine Weyl群の時に(通常のdualなのは表現論との都合),体kに対してX∗(T)⊗Zk⊕k上に(w,λ)(ν,r)=(w(ν),r−⟨λ,ν⟩)という形の表現構造を入れることができるが,これはkの標数が正の場合にreflection faithfulではない.(faithfulでないことがすぐわかる.定義からreflection faithfulならばfaithfulである.)
まぁ,表現がfaithfulでないとまずいのはほぼ明らか.Soergelの理論は各w∈WのGL(V)への像しかみない.従って表現がfaithfulでないと区別のつかないWeyl群の元が出てくる.Soergel bimoduleはHecke環を圏論化するので,元が区別できないとまずいわけで.
Elias-Williamsonはうまく機能している場合のSoergel bimoduleの生成元と関係式を記述した.まぁそれはよいのだが,その生成元と関係式によって,Vがreflection faithfulでない場合にもSoergel bimoduleの圏の類似を定義した.この圏もHecke環を圏論化するのだが,どうやらこれは「正しい」対象であるようで,その後の研究に使われていたり,parity sheafの圏との圏同値が示されたりしている.
で,このVの話.さすがに単に表現というだけではまずく(例えば自明表現では機能しないと思う),彼らは次の条件を課している.kを可換環とする.
有限階数自由k加群Vおよびαs∨∈V,αs∈V∗=Homk(V,k) (s∈S) がrealizationであるとは以下を満たすこと.
- ⟨αs∨,αs⟩=2.
- s(v)=v−⟨v,αs⟩αs∨によりs:V→Vを定めると,これはWの表現を与える.(同じことだが,braid relationを満たす.)
- ある技術的条件を満たす.
この技術的条件は次の通り.
s,t∈Sに対して,stの位数をms,tとし,有限であると仮定する.x=⟨αs∨,αt⟩,y=⟨αt∨,αs⟩とおく.このとき,k∈Z≥0に対して[k]x,[k]y∈kを以下で帰納的に定める.
[0]x=[0]y=0,[1]x=[1]y=1,[2]x=x,[2]y=y, [n+1]x=[2]x[n]y−[n−1]x, [n+1]y=[2]y[n]x−[n−1]y.
このとき,「技術的条件」とは[ms,t]x=[ms,t]y=0を満たすことである.ちなみに帰納法ですぐわかるがkが奇数ならば[k]x=[k]yである.
なんだかよくわからない条件である.少し計算をしてみた.
s,tがVに可換に作用する場合を考える.つまり⟨αs∨,αt⟩=⟨αt∨,αs⟩=0の場合.[2]x=[2]y=0であるので,[n+1]x=[n−1]x.よって[n]xが0になるのはnが偶数と同値.そもそもこのような表現が存在するのはms,tが偶数の場合のみなので,このときは常に条件が満たされるようだ.
(もう少し計算してみようかと思ったけどやめた.)
なお,(st)kの作用を計算するとこの数が現れる.具体的には
(st)kαs(st)kαt=[2k+1]xαs−[2k]yαt,=[2k]xαs−[2k−1]yαt
が成り立つ.(帰納法ですぐに示せる.)
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